製品導入事例

クリック感を調節できるシートスイッチ

デジタル機器や家電はもちろんのこと、業務用機器や産業機械、設備にも高いデザイン性が求められるなか、ON/OFFなど機械の稼働を決める“スイッチ”の形も変化しています。これまではボタンや切換えレバーなどメカニカルなスイッチが使われてきましたが、いまでは筐体と一体化したような薄いシート状の“シートスイッチ”が広がっています。薄くて軽い、豊かなデザイン性、さらにはボタンを押した時のしっかりしたクリック感など、スイッチに求められる要素を高いレベルで実現したシートスイッチについて、専門メーカーのマルサン・ネーム(神奈川県横浜市、森 征二 社長)に聞きました。

デザイン性豊かなシートスイッチ。
丸や三角、四角など形や大きさは自由自在。表面処理で高級感の演出も

技術部 飯島 清治 氏
スイッチというと押しボタンや切換え式などのメカニカルなものをイメージしがちですが、製品にデザイン性が求められるようになるなかで、最近はシート状のスイッチが使われるようになっています。

シートスイッチは、PET材を基本とした表面シートに絵柄を印刷し、ボタン形状をエンボス加工で作っており、厚さはわずか1mm程度。厚くて大きく、しかも重いメカニカルスイッチではデザイン性に限界があるのに対し、シートスイッチは薄くてデザインの自由度が高く、丸や三角、四角、楕円など形や大きさは好みで変えられます。さまざまな形に切り出したり、小型軽量のデザインにするなど自由自在。点字加工や加飾も可能です。
また表面処理を濡れた感じにしたり、マット調にすることで手触りを変えることもでき、高級感を出すこともできます。

機器への組込みに最適で、携帯電話やデジタル家電のリモコン、医療機器、券売機のようなキオスク端末などに広く採用されているほか、電車や飛行機などの高級クラスのシートにも使われるなど、デザイン性豊かでさまざまな業界・用途に広がっています。

深い・浅い・硬い・柔らかいなど、さまざまなクリック感を調整可能!
カチッなどの音の有無も選べる

シートスイッチの例
シートスイッチの構造
また、スイッチはデザイン性だけでなく、しっかりしたクリック感、押した時に人が気持ちよく感じること、確実に押したという安心感を与えることも重要な要素です。ストロークを深くしてしっかりした感じだったり、浅いストロークで軽く押すだけなど、用途や利用対象ユーザーによって最適なクリック感は違います。例えば、モバイル機器や身近な機械では気持ち良い軽さが、産業機械や装置ではしっかり押した安心感が求められることがあります。

シートスイッチは薄いながらもしっかりしたクリック感があり、しかもその押した感覚も調整できます。カチッカチッとした音が出したいというニーズにも対応でき、さまざまなクリック感を実現できます。

シートスイッチと同じように薄いスイッチとしては金属をドーム状に加工した「メタルドームスイッチ」がありますが、メタルドームスイッチと同等のクリック感・低ストロークをPETのシートスイッチで実現しました。

ひと目見ただけで分かるボタンを実現!
表面に描いたアイコンで誰でも使いやすい機器に

複雑操作もアイコンで分かりやすく
昔に比べて装置や機器は多機能になって操作しなければならないことが増えています。それにともなってボタンの数も増える一方で、ユーザーはどのボタンが何を意味して、押すとどんなことが起きるのかを覚えるのが大変です。

iPhoneなどタッチパネル端末は直感的な操作ができて初心者でも使えると言いますが、操作が複雑化するなかでスイッチもそうした操作感覚を目指さなければいけないと考えています。特に世界市場に展開するような機器や機械、装置は、言語も知識レベルもさまざまな世界中の人が操作します。誰でも簡単に操作できるかどうかは製品を差別化する上で大きなポイントにもなります。

シートスイッチはそのデザイン性を活かして、ボタン表面にイラストや記号など“アイコン”を描くことで、初めて使う人にも分かりやすくすることができます。またボタンの形自体をアイコンのようにデザインすることもできます。誰でも使える“ユニバーサルデザイン”に対応しやすいというメリットがあります。

要望・用途に合わせたシートスイッチを制作。

当社はシートスイッチ専門メーカーとして、表面の印刷から電子機器の組み立てまですべて一貫して行うことができます。どんなシートスイッチが欲しいかを伝えていただくだけで、デザインも含めて御社の要望に合わせたスイッチの制作が可能です。
シートスイッチは成熟しつつある技術ですが、いま新技術として、曲面にもスイッチを配せる3次元のスイッチの開発を進めています。これができることによりスイッチ技術の幅が広がり、機器組込みなど新たなスイッチ市場が生まれる可能性があります。

また、家電やデジタル機器など弱電分野ではシートスイッチは広がっていますが、産業機械など強電分野ではまだメカニカルスイッチが使われていることが多いようです。防水・防塵性に優れ、高い信頼性と品質の良さ、クリック感、コスト感などを伝え、メカニカルスイッチの代替としてシートスイッチへの切替えを促進していきたいと思っています。